筋肉痛は筋トレに「不可欠」なのか?
「一生懸命筋トレをして、ヘトヘトになっているのに翌日筋肉痛が来ません。これって筋トレの効果が無いということですか?」
こういう質問が非常に多いです。
筋トレをすれば筋肉痛になる。
では、筋肉痛が来なければ筋トレの効果が出ていないということ?
こういう風に考えている方は非常に多くて、先日もヤフー知恵袋でこんな質問を見かけました。
筋トレに筋肉痛は不可欠なのでしょうか?現在腹筋ローラー(アブローラー)と器具を使わない普通の腹筋を、日を置いて交互に行なっています。腹筋ローラーの場合、翌日にたいてい筋肉痛になるのですが、普通の腹筋ではなりません。
しかし、感覚的には器具を使わない腹筋の方がキツく、最後の方は腹筋が引き裂けそうな感覚になります。逆に腹筋ローラーの場合、キツさはほとんどありません(全身運動に近いから?)。
普通に考えると筋肉痛になった方が「効いてる」と言うことになるのかと思いますが、やはり筋肉痛になる腹筋ローラーを優先するべきでしょうか? また、筋肉痛にならなくても、筋肉の増強は見込めるのでしょうか?
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14175758469
これは、筋肉痛と筋トレの効果に対する誤解から来ています。
そもそも筋肉痛の原因は?
筋肉痛の原因については、わかっていない事も多く、たくさんの仮説が存在します。
その中でも有力なのは、筋肉の使われ方に応じて起こる炎症反応であるというものです。
筋肉は”収縮”することによって力を発揮する器官です。
筋肉が収縮することで、関節を動かし、対象に力を伝えることで、人間は様々な動作をこなすことができます。
この収縮には3種類あることをご存知ですか?
その3種類とは…
コンセントリック収縮
・筋肉が伸びた状態から収縮することによる力。
(関節を曲げるという動きは、筋肉のコンセントリック収縮によって行われます。)
エキセントリック収縮
・筋肉が収縮した状態から伸びる動きをコントロールする力。
(関節を曲げた状態から伸ばす動きに対してに負荷がかかるとき、その負荷をコントロールする為に筋肉が働きます。
例えば、重いものを持ち上げて、それを重力に耐えながらゆっくり下ろすとき、関節周りの筋肉がエキセントリック収縮しています。)
アイソメトリック収縮
筋肉を縮みも伸ばしもせず固定する力。
(負荷に対して関節を動かさずに固定させるのがアイソメトリック収縮です。)
このうち、筋肉痛が起こるのはエキセントリック収縮だけなのです。
コンセントリック収縮では筋肉痛は起こりません。
アイソメトリック収縮では、完全に負荷をコントロールしきれず、多少なり筋肉の長さが変わった場合にのみ筋肉痛が起こります。
これが何故なのかは詳細にはわかっていませんが、
エキセントリックは筋肉が「収縮しようとしているのに伸ばされている」という非常に負荷が強い運動であることが関係していると思われます。
一定の負荷のエキセントリック収縮を伴う運動を繰り返していれば、ひどい筋肉痛が起こります。
人間が歩く、走る、といった運動をする時、膝関節周りの筋肉は、一歩ごとにエキセントリック収縮をして衝撃を吸収しています。
山登りのとき「登りより下りのほうがヒザが辛い」と言われるのは、下りのほうが膝にかかる衝撃が強いからです。
逆に、自転車や水泳のような運動は、エキセントリック収縮をほとんど使わないため、どれだけ疲れても筋肉痛は起きづらいのです。
コンセントリック収縮でも筋肉は激しく使われているのですが、筋肉痛の度合いは弱くなります。
筋肉痛は筋肥大に関係ない
腹筋ローラーをやったことがある方ならわかると思いますが、腹筋ローラーで一番キツイのは”身体を伸ばすとき”です。
伸ばした状態から戻すときより、ゆっくり伸ばすときのほうが強烈な負荷を感じますよね。
”ゆっくり伸ばす”というのは、まさにエキセントリック収縮です。
逆に、腹筋運動では一番キツイのは”上体を起こす”ときです。
寝転がった状態から起き上がるときが一番負荷を感じ、下げる時は重力に従って下がるだけなので負荷は強くありません。
”上体を起こす”というのは、まさにコンセントリック収縮です。
腹筋運動では、上体を起こすために強烈なコンセントリック収縮を使いますが、
逆に下げる時は重力に従って下がるだけなので、エキセントリック収縮はあまり使いません。
このため、強烈にエキセントリック収縮を使う腹筋ローラーより、筋肉痛が少ないのです。
しかし、筋肉痛の有無と筋トレの効果は別問題です。
この質問をした人が、「感覚的には器具を使わない腹筋の方がキツく、最後の方は腹筋が引き裂けそうな感覚になります。」と感じている以上、
トレーニング効果としては、腹筋運動の方が効いている可能性が高いです。
ここが問題です。
筋肉痛で筋肉は強くならないのです。
筋肉痛は、ただ痛いだけです。
筋肉の成長に必要なのは、強い負荷の設定です。
どれだけ強い負荷でも、運動の仕方によっては筋肉痛にならないこともあります。
また、人間の身体はどんな状況に次第に適応していくものですので、
トレーニングを始めたばかりの頃はひどい筋肉痛になっていたとしても、トレーニングが習慣になってくれば、身体が適応して筋肉痛が起きづらくなります。
しかし、だからといってトレーニングが無いわけではありません。
適切な負荷を設定していれば、筋肉痛が無くても筋肉はしっかり発達します。
筋肉痛の有無にとらわれないで、”効いている”と実感しながらトレーニングを行うことが重要ですね。