運動をすると活性酸素が増えるが、運動を続けると抗酸化力が上がる

運動と活性酸素

人間が生きるために消費した酸素の約2%は活性酸素に変化します。

 

活性酸素は周囲の細胞を酸化させ、錆びさせていきます。

 

この錆によって人間は老化するのです。

 

では、酸素を膨大に消費する運動中は活性酸素が増えるのでしょうか?
残念ながらその通りです。

 

しかし、人間の身体の機能は適度に刺激することで強化されるため、運動を続けていれば抗酸化力も強化されます。

 

今回は、運動と活性酸素についてご紹介します!

 

活性酸素はミトコンドリアで生まれる

酸素を消費して行う有酸素系のエネルギー供給回路では、ミトコンドリアの中にあるTCA回路によってATPが生み出されています。

 

酸素でATPをつくるプロセスが正常に進んでいくと、酸素分子が電子を失う還元反応が4回繰り返される中で36個のATPが生み出され、最終的には無害な水に変わります。
しかし、取り込んだ酸素の1〜3%ほどは完全に還元されず、活性酸素に変化します。

 

活性酸素とは、その通り活性化して他の物質と反応しやすい酸素のこと。
酸素の反応とは、つまり「酸化」です。

 

十円玉が酸化して錆びたり、屋外に放置していた自電車が錆びるのと同じように、人間の細胞も活性酸素によって錆びていき、老化が進行します。

 

酸素を使ってエネルギーを生産しているミトコンドリアが、同時に活性酸素も生みだしているのです。

 

運動中は活性酸素も増える

運動時の身体全体の酸素消費量は平時の10〜15倍にもなり、活動している筋肉への血流量は30倍、酸素流入量は100倍にもなります。
ミトコンドリアで利用される酸素は1〜3%が活性酸素になりますから、運動時には筋肉で生じる活性酸素も非常に多くなります。

 

また、「筋トレなら酸素を消費しないからセーフでは?」と思うかもしれませんが、残念ながらそうではありません。

 

筋トレによって負荷を加えながら筋肉が強く動くと、周囲の血管が圧迫されて一時的に血流が滞り、その後血管の形がもとに戻って血流が回復します。
これを”再灌流”と言いますが、この再灌流も活性酸素を大幅に増やす原因となります。

 

血流が制限された状態では、細胞内のATPが壊れてしまいヒポキサンチンという成分に分解されます。
ヒポキサンチンは尿酸に代謝されて尿として排出されますが、再灌流時にはヒポキサンチンを処分してくれる酵素の構造が変化し、再灌流で再び供給された酸素から本来は生じないはずの活性酸素が大量発生するのです。

 

運動によって抗酸化力は上がる

人間の身体には、本来活性酸素に対抗する機能が備わっています。

 

「活性酸素が増えるから運動は身体に良くない」と決めつけるのは早合点。

 

確かに短期的には運動は酸化をすすめるように見えますが、長期的には酸化に対する抗酸化力が高まることがわかっています。

 

人間の身体の機能は適度に使うことで鍛えられ、使わなければ萎縮する
これは筋肉だけに限った話では無いのです。

 

運動で活性酸素が増えると、健康に有益な遺伝子を読み出すPGC-1αという転写因子が増え、免疫応答に関わるNF-kβという転写因子も活性化します。
これらの働きにより、抗酸化力を増やせという遺伝子からの司令が伝わり、身体全体の抗酸化力が強化されるのです。

 

この他、活性酸素が増えるとPPARγという別の転写因子も増えて、酸化と同じように有害な糖化を防ぐインスリンの効き目もアップします。

 

一時的に運動で活性酸素が増えても、抗酸化力を高まることでその害は打ち消されます。
さらに、抗酸化力が上がれば運動時以外の安静時にも高い抗酸化力が様々な疾病を防いでくれるので、結果的にはやはり運動は健康に良いのです。

 

運動と活性酸素

抗酸化力を上げる適度な運動

運動によって抗酸化力が上がることがわかりましたが、それでもやり過ぎればデメリットのほうが大きくなります。
抗酸化力を上げる適度な運動とは、どの程度の事を言うのでしょうか?

 

ます有酸素運動。
これは様々な試験により、最大酸素摂取量の50〜60%ほどのレベルが、抗酸化力を上げるのに最も適しているとわかっています。
これは体脂肪燃焼にも有効なペースであり、体感的には「やや息が上がる」程度の運動。
俗に言うLSDニコニコペースという事になります。

 

筋トレの場合、1回1時間程度、週に2〜3回が適切とされています。
これも筋肥大には効果的とされるペースですよね。

 

人間の身体には、本来あらゆる害に対抗するための機能が備わっています。
しかし、それも使わなければ萎縮していくばかり。

 

適度に使うことで、薬などに頼らなくても自分の力で害に打ち勝つ、強い体を維持できるというわけです。

 

参考文献:月刊『TARZAN』17年7月号


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