片足スクワットで身体が使いやすくなる?
最近”ファンクショナルトレーニング”という言葉が流行っています。
”ファンクショナル”とは、”機能的”という意味です。
身体をより機能的に高めることを目的としたトレーニングが、ファンクショナルトレーニングということですね。
特にスポーツをしている人の場合、筋トレは手段であって目的ではありません。
持ち上げるバーベルの重量を増やすことは、あくまでも”目的”ではなく、競技のパフォーマンスを高めるための”手段”でしか無いのです。
また、アスリートではなくても、普段の日常生活のための体力づくりのためにトレーニングをしている人も多いでしょう。
こういう場合にも、単なるウェイトトレーニングではなく、ファンクショナルトレーニングが有効になる場合があります。
スポーツから日常生活まで、様々な場面で役立つ”ファンクショナル”な肉体を手に入れるためにファンクショナルトレーニングを導入してみるのも良いかもしれませんよ。
両足で行うスクワットのデメリットとは
普通、スクワットといったら、両足をしっかり地面について行うものです。
スクワットにかぎらず、デッドリフト、オーバーヘッドプレス、ベンチプレス、ダンベルプレス、、、
ほとんどのエクササイズは、身体の両側を同時に使って行っていますよね。
身体の両側を同時に使うトレーニングを「バイラテラルトレーニング」と言います。
しかし、スポーツにおける様々な動作を思い返してみると、実は身体の両側を同時に使う場面って少ないのです。
野球の投球、サッカーのシュート、テニスのスマッシュ、ボクシングのパンチ、剣道の素振りでさえも、身体の片側に重心を置いて、それぞれの側面が異なる動きをしています。
身体の両側を同時に使うバイラテラルトレーニングばかり行っていることで、身体の片側を主に使う動きがやりにくくなってしまうことがあります。
これを”両側性機能障害(バイラテラルデフィシット)”と言います。
これを防ぎ、スポーツに於いても”機能的”な身体を作るためには、身体の片側を使ったトレーニングを取り入れるのが有効です。
身体の片側を使うトレーニングを「ユニラテラルトレーニング」と言います。
両足スクワットが不要なわけではない!
前項で両足スクワットを行うと、両側性機能障害が出る可能性があるというデメリットを書きましたが、だからと言って「両足スクワットをすべきではない」という事では全くありません。
両足スクワットは、あらゆるスポーツから日常生活に至るまで、身体の基礎を作るためには非常に優れた種目です。
両足スクワットの最大のメリットは「高重量を持てる」事です。
体幹の鍛え方でも書いたように、高重量のスクワットは体幹トレーニングとしても最強の部類に入ります。
高重量を使える両足スクワットで、体幹、臀部、下半身を鍛えることは、あらゆるスポーツの基礎となります。
身体の基礎を作るのなら、両足スクワットは最優先と言ってもいいトレーニングです。
片足スクワットでファンクショナルな身体を作る
両側性機能障害は、何らかの神経障害であると考えられています。
両側を同時に使うトレーニングばかりをすることで、片側ごとに違う動きをすることを身体が忘れてしまうという可能性があるのです。
これを解消するために有効なトレーニングが、片足スクワットです。
片足スクワットは、もちろん両足スクワットほど大きな負荷を扱うことは出来ません。
しかし片足でバランスをとるために、普通のスクワットよりも臀部の関与が大きくなり、やり方によっては臀部のトレーニングとしてもかなりの効果があります。
加えて全身のバランス能力を鍛えることで、両側性機能障害の予防、より機能的な身体を作ることを目的としたトレーニングになるのです。
ブルガリアンスクワットでお尻をガッツリ鍛える
片足スクワットでどうしてもバランスが取れない、柔軟性の問題で難しいという場合には、片足を台などに置く”ブルガリアンスクワット”がオススメです。
ブルガリアンスクワットは、片足スクワットよりは安定性が高いため簡単に行なえます。
加えて、ウェイトを持ちやすいのもメリット。
高重量のダンベルが使えれば、片側の臀部を狙って両足スクワットなみの負荷をかけることも可能です。
片足ジャンプ
片足ジャンプは、筋力トレーニングというより、身体の機能性を高める側面が強いエクササイズです。
着地の衝撃で、とても強いエキセントリックな負荷が臀部や大腿部にかかり、その状態でバランスを取ったりすることで、スポーツにおける障害予防の効果もあります。
最も理想的な筋力バランス
この記事では、「両足スクワットと片足スクワットのどちらが優れているか」という話ではなく、「両足スクワットと片足スクワットの効果の違い」を理解して頂ければと思います。
両足スクワットで体幹部をガッツリ鍛えた後に、片足スクワットを行うことで臀部を中心にさらに強化し、バランス能力、神経系も鍛えることが出来ます。
人間にとって最も理想的な筋力バランスは、
体幹>臀部>大腿部
と言われています。
多くのアスリートの筋力バランスはこのように成っているはずです。
逆に、
体幹<臀部<大腿部
というのは、人間にとって良くない筋力バランスです。
これは「カヌーから大砲を撃つ」とも揶揄され、そのような身体では船体ごと転覆してしまいます。
せっかく鍛えた筋力も、使いこなせなければ意味がありません。
もし皆さんが、普段両側を使うバイラテラルトレーニングばかり行っていた場合は、せっかく鍛えた筋力をより機能的にするために、ユニラテラルトレーニングも取り入れてみてはいかがでしょうか?
参考文献
月刊「IRONMAN」2017年3月号