ピストルスクワットで「使える筋肉」を鍛える!スポーツマンが行うべきトレーニングとは
「ジムで鍛えた筋肉は使えない筋肉になる」
実際には多くのアスリートがジムでトレーニングをして筋肉を鍛えているのに、どうしてこんな事が言われるんでしょうか?
ここで言う「使えない筋肉」とは、見かけほどの力を発揮できない筋肉のこと。
ジムでマシーンやバーベルを使ったトレーニングだけをしていても、いざスポーツや力仕事をやってみると、思いのほか力を発揮できない事が多々あります。
その原因は、身体に本能的に備わった「抑制」機能であると考えられています。
その抑制のリミッターを解除し、筋肉の力を100%発揮するためのトレーニングとして『ピストルスクワット』は数多くのアスリートが取り入れているトレーニングです。
何らかの競技の補強としてジムに通っている方には、ぜひ行ってもらいたいピストルスクワット。
その効果とやり方をご紹介します!
「使えない筋肉」は身体のバランスが悪い
人間の身体には、細かく分けると600以上もの筋肉が備わっています。
それらが複雑に重なり合い、連動し合う事で身体は動いているのです。
筋肉は、その種類や役割によって大きさや強さが異なり、そのバランスが保たれていることで本来の力を発揮できます。
逆に、筋力のバランスが悪い身体は、一部の筋肉だけが大きくてもその力を十分に発揮できないのです。
スポーツジムに置いてあるトレーニングマシンのような器具を使った筋トレばかりを行っていると、この筋力バランスが崩れてしまうことが多々あります。
例えば「レッグプレスマシン」を見てみましょう。
レッグプレスはどこのジムにも置いてある定番のトレーニングマシンで、大腿部、お尻、ハムストリングスを中心に下半身を全体的に鍛えられる素晴らしいマシンです。
ジムに行って下半身を鍛えたかったら、最優先で行うべきマシンとも言えます。
その体勢は見ての通り、背中全体とお尻を椅子に押し当てて固定し、極めて安定した姿勢となります。
このため、自分の力でバランスをとる必要が全く無く、純粋に大腿四頭筋や大殿筋の力を全てウェイトに向けることができます。
だからこそ、レッグプレスはバーベルスクワットでは到底上げることが出来ないような重量を持ち上げることが出来るのです。
しかし、このようなトレーニングばかりを繰り返していると、レッグプレスで鍛えられる大腿四頭筋や大殿筋の筋力に対して、身体のバランスを取るための細かい筋肉が弱すぎる状態になってしまいます。
すると、強すぎる大腿四頭筋のパワーによって姿勢が崩れ、膝や足首に大きな負荷がかかって捻挫などの怪我を引き起こします。
それを防ぐために、脳が無意識に大腿四頭筋や大殿筋に送る神経インパルスを抑制して、発揮できる筋力を弱めてしまいます。
このように、人間の身体は弱い筋肉に合わせて強すぎる筋肉を抑制してしまうのです。
マシンに身体を固定して行うトレーニングや、両足をしっかりついて安定した姿勢でのトレーニングばかりを行っていると、関節を動かす大筋群とバランスをとる小筋群のバランスが崩れ、大層な見た目の割には思ったほど筋力を発揮できない「使えない筋肉」となってしまうのです。
不安定な体勢でバランスを鍛える
脳が無意識に筋力を抑制するリミッターを解除するには、大筋群の筋力を十分に支えられるだけのバランス力を鍛える必要があります。
そのために有効なのは、自分の力でバランスをとる必要がある「不安定」な体勢でのトレーニングです。
しかし、だからといってバランスボールなどを使って必要以上に不安定な体勢になるのも有効とは言えません。
実際のスポーツ競技は、バランスボールの上で行うわけではないからです。
多くのスポーツ競技は、ある程度固い床や地面の上で行うものであるため、それを再現して安定した床の上で身体の片側づつを使ったトレーニングが、「使える筋肉」を鍛えるのに特に有効であると考えられます。
スポーツにおける様々な動作を思い返してみると、実は身体の両側を同時に使う場面はほとんどありません。
野球の投球、サッカーのシュート、テニスのスマッシュ、ボクシングのパンチ、剣道の素振りでさえも、身体の片側に重心を置いて、それぞれの側面が異なる動きをしています。
バランス力を鍛えるピストルスクワット
片足立ちで行うピストルスクワットは、不安定な体勢でバランスを取りながら力を発揮する、機能的なトレーニングです。
この動作を行うには、次のような順番で力が発揮される必要があります。
@体幹部の筋肉が上半身を固定する
A内転筋と中殿筋で太ももを両側から固定する
B大殿筋と大腿四頭筋で身体を上下させる
レッグプレスでは、椅子に身体を固定するので@とAが必要なく、Bに集中できます。
しかし、ピストルスクワットはBに至るまでに@とAが必然的に動員され、スポーツ競技に本当に役に立つ身体の連動性が鍛えられると言えます。
やってみるとわかりますが、ピストルスクワットは脚より先に”腹筋”が疲れます。
それだけ、体幹を安定させるのに力を使っていると言うことですね。
ピストルスクワットのやり方
ピストルスクワットが出来るようになるまでのバリエーション
ピストルスクワットは、自重トレーニングの中でもかなりレベルの高いトレーニングです。
普通は、片足を上げたまま連続で行うピストルスクワットは出来ない人がほとんどです。
ここでは、そのピストルスクワットが出来るようになるまでのレベル別のトレーニング法をご紹介します。
使わない方の脚を前に出して行うピストルスクワットは非常に難易度が高いですが、これを後ろに出して行うと一気に楽になります。
前に出した腕と後ろに出した脚でバランスが取れるため、最初はこのやり方で10回出来るようになるまで鍛えましょう。
なお、これでも難しい場合は、後ろに出した脚を椅子などに乗せて固定してしまうスプリットスクワットがおすすめです。
脚を前に出せるようにはなっても、深くしゃがみ込むのはまだ無理という段階では、椅子などを利用して狭い稼動域で行います。
このとき、一回ごとに椅子に座り込んでしまうのではなく、おしりが触れた瞬間にすぐ立ち上がるようにしましょう。
本来のピストルスクワットは、片足ごとに連続して行うものですが、それが難しい場合は1回ごとに両足を付いて左右交互に行いましょう。
連続して同じ足で行うほうが効果が高いのは当然ですが、最低でも連続10回くらい出来ないようでは、逆に交互に行ったほうが効率が良いと思われます。
ピストルスクワットで使える筋肉へ進化させる
なにかしらのスポーツ競技の補強のためにトレーニングを行っている人は、ピストルスクワットで片足での筋力発揮を向上させておくことで、大きな恩恵を受けることが出来ます。
筋肥大だけが目的でトレーニングを行っている人には必要ないトレーニングですが、それでも片足でのエクササイズは全身の連動性を向上させ、より大きな力の発揮が可能になります。
ただし、ここで勘違いしてはいけないのは、身体を安定させて行うトレーニングは「筋肥大・筋力向上」のためにはこれ以上なく効率的なトレーニングであるということです。
どんなにバランス力が優れていても、根本となる筋肉がある程度肥大していなければ話になりません。
安定した状態で行うトレーニングでしっかり肥大した筋肉を作った上で、ピストルスクワットなどによるバランス力の強化が活きてくるのです。
筋肥大一辺倒、バランス力一辺倒になるのではなく、両方をバランスよく行っていくのが大事ですね!