HMBとプロテインってどう違うの?優先順位は?
最近、筋トレサプリとして注目されている「HMB」
昔から知られているプロテインとはどう違うのでしょうか?
「HMBとプロテインならどっちを優先すべき?」という質問も多いですよね!
今回は、HMBとプロテインの違いと優先順位についてご紹介します!
HMBとプロテインの関係
HMBとプロテインの関係について理解するために、まずはプロテインについておさらいしておきましょう。
そもそも英単語の「Protein」とは「タンパク質」という意味であり、市販のプロテインパウダーはタンパク質のカタマリなのです。
最も一般的なホエイプロテインは、牛乳のタンパク質を抽出して粉末にしたもの。
他にも、大豆のタンパク質を抽出したソイプロテインという商品もあります。
タンパク質=アミノ酸
筋肉や骨、皮膚、髪の毛など、身体のあらゆる部位の材料となる事で知られているタンパク質
そのタンパク質は、食事で摂取されると腸内で「アミノ酸」に分解されます。
人間の身体をつくるために必要なアミノ酸は20種類
そのうち、体内で合成できないために必ず食事で摂取しなくてはいけない9種類を「必須アミノ酸」と言います。
プロテインパウダーには、この9種類の必須アミノ酸が全て含まれています。
9種類の必須アミノ酸
バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン(トレオニン)、メチオニン、リジン(リシン)、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファン
筋肉の発達に貢献するアミノ酸BCAA
9種類の必須アミノ酸のうち、”筋肉の発達”のために非常に重要な役割をするバリン、ロイシン、イソロイシンの3種類のことを”BCAA”と言います。
BCAAは筋肉の発達、筋肉の分解抑制、疲労回復などに大きな働きをするため、プロテインからこの3種類のアミノ酸だけを抽出したBCAAサプリというものも販売されています。>BCAAの効果について詳しくはコチラの記事へ
最も重要なアミノ酸 ロイシン
筋肉の発達、筋肉の分解抑制などに大きな効果を発揮するBCAAですが、その中でも特に重要なのが”ロイシン”です。
ロイシンはBCAAの中でも1日の必要量が最も多く、特にトレーニングをして筋肉を酷使している人は大量に摂取する必要があります。
ロイシンの主な効果
@筋肉の合成を促進する
A筋肉の分解を抑制する
Bインスリンの分泌を促進する
C肝機能を強化する
>ロイシンの効果について詳しくはコチラの記事へ
ロイシンが作り出すHMB
筋肉の合成、分解抑制に大きな働きをするロイシンですが、そのロイシンが体内で作り出すのが”HMB”です。
ロイシンはBCAAトランスフェラーゼという酵素の働きでKIC(αケトイソカプロン酸)となり、KICはKICジオキシゲナーゼという酵素の働きでHMBになります。
ロイシンのHMB生成率は約5%
つまり、ロイシンを20g摂取するとHMBが1g生成されるというわけです。
ロイシンの筋肉合成、分解抑制効果は、実はこのHMBの働きが非常に大きいことが、最近の研究でわかってきたのです。
mTORシグナル伝達経路をHMBで活性化
筋肉の肥大とは、筋繊維の細胞が増殖して増えていくことによって起こりますが、この細胞分裂を活性化させる回路をmTORシグナル伝達経路と言います。
HMBには、このmTORシグナル伝達経路を活性化する働きがあることがわかっています。
さらに、筋繊維の中でも肥大しやすい速筋繊維における筋幹細胞の増殖を促進する作用や、筋サテライト細胞の分化を促進する作用も報告されています。
HMBは筋肉の分解を抑制する
人間にとって筋肉は必要不可欠な器官ですが、トレーニングによって大きく発達した筋肉は「生きる上では不要」になります。
身体には、こうした必要以上の筋肉を分解してタンパク質を取り出す仕組みが備わっています。
こうした筋肉分解作用の代表的なものが「ミオスタチン」ですが、HMBにはこのミオスタチンを抑制する効果も報告されています。
>ミオスタチンについて詳しくはコチラの記事へ
プロテインとHMBの役割の違い
「サプリメント」とは、本来「補給する」という意味です。
人間にとって必要な栄養素は多岐にわたりますが、多くの場合、普通の食事で必要な栄養を全て摂るのは難しいもの
このため、足りない栄養を補給するのがサプリメントの役割です。
しかし、このように「100%に足りないものを補給する」だけがサプリメントの役割ではありません。
サプリメントの中には「120%の力を引き出す」ためのものも存在します。
このようにターボブースターのような役割をするサプリを「エルゴジェニックエイド」と呼びます。
エルゴジェニックエイドの中でも最も有名なのは、おそらく”カフェイン”でしょう。
カフェインには脳を覚醒させて眠気をふっとばす効果があります。
これを体感したことのある人は多いと思います。
筋トレの知識がある方なら、代表的なエルゴジェニックエイドは”クレアチン”です。
クレアチンは筋肉の最大パワーを出すのに不可欠なエネルギー源で、サプリメントでクレアチンを充填することによって、いつも以上の力を発揮することが出来ます。
>クレアチンについて詳しくはコチラの記事へ
補給とブースターの違い
タンパク質のカタマリであるプロテインは、9種類の必須アミノ酸を全て含んでおり、食事で摂りきれないタンパク質を補給するのに適しています。
つまり
プロテイン=タンパク質の不足を補うもの
これに対して、HMBは筋肉の材料であるタンパク質が十分にあるという前提で、そのタンパク質が筋肉を合成するのを促進する効果があります。
つまり
HMB=筋肉を合成するブースター
補給のためのプロテイン
ブースターのためのHMB
このように2つの役割の違いを理解しておきましょう。
ここからは、プロテインとHMBの優先順位の違いについて見ていきたいと思います。
増量中のサプリ活用
「とにかく筋肉を増やして身体をでかくしたい!」という場合、筋トレと共に飯を食いまくって体重を増やす方法が取られます。
こういう増量中の場合、サプリの有効性は実は低くなります。
人間は本来、食事で栄養を摂る生き物であり、その食事を食いまくっているなら栄養不足になる可能性は低いからです。
筋肉をつけるにはタンパク質と言われますが、必要なのはそれだけではありません。
脂質も炭水化物も、ビタミンもミネラルもみんな必要です。
こういった栄養バランスを考えて大量の食事を摂っているのなら、サプリは必要ありません。
栄養バランスを考えるのがめんどくさい場合は、ビタミン類などはサプリで摂ったほうが良いかもしれません。
また、大量のタンパク質を摂取したくても、胃袋や財布の問題で難しいという場合は、プロテインの活用が有効です。
プロテインパウダーは、ほとんど腹に溜まらないタンパク質の塊であるため、同じ量のタンパク質を摂るのなら最も安価で胃袋にも負担がありません。
このように必要な栄養を全て満たしている状態で、さらに筋肉合成にブースターをかけたい場合は、HMBも活用しましょう。
増量中の場合は、一番に食事、次にプロテイン、その次にHMBという優先順位となります。
減量中のサプリ活用
「筋肉を付けつつ脂肪を落としたい!」
こういう目標を持ってダイエットする場合、栄養管理は非常に重要です。
もちろん、筋肉を付けるために筋トレが必要なことは言うまでもありませんが、どんなに運動してもそれ以上に食べていたら体脂肪は減りません。
体脂肪を減らしていくためには、ある程度の食事制限が必須となるため、栄養不足に陥る可能性があります。
このため、不足する栄養はサプリで補う必要があります。
ダイエット中にも筋肉量を維持、もしくは増量したいという場合、高強度の筋トレと十分なタンパク質が必須となります。
脂肪を落とすためにはカロリーを制限しなくてはいけないのですが、その中でもタンパク質だけはしっかりと食べるようにしましょう。
また、カロリー制限下では、身体は生存本能にしたがって筋肉の合成を抑制し、省エネに努めます。
しかし、理想の細マッチョになるには筋肉を増やさなければいけないので、それは困りますよね。
このような場合に、筋合成ブースターであるHMBが有効になります。
HMBはmTORシグナル伝達経路に強力に作用し、カロリー制限下でも筋肉合成を促進して分解を防ぎます。
もちろんプロテインでタンパク質を補給することも重要ではありますが、プロテインにブースター効果は無いため、結局はカロリー制限下では筋合成は抑制されてしまうのです
このため「筋肉を付けつつ脂肪を落としたい」という場合には、食事制限でカロリーを抑えているという前提の元、HMBを優先するべきだと考えられます。